日野川水系の小水力発電所
農協系小水力
難攻不落の溝口発電所は、鳥取県の西伯郡伯耆町にある小水力発電所です。
昭和34年、溝口、日光、二部の三農協によって建設されました。
現在は京葉ガスエナジーとJA鳥取西部の協働により運営されています。
あとは…うーむ…
………
……
…
どしたの?
基本的に立ち入り禁止⛔ばっかりでねぇ…
現地写真が少ないからぜんぜん面白くねぇんだよ。
沿革を中心にサラッとやって終わります。
もくじ
所在地
伯耆町長山、山の中にあります。
警察横の踏切を渡って山方面へ向かうとよいでしょう。
ナビに従って道を進むとだんだん心細い感じの山道になり…
崖っぷちから建屋がチラッと見える場所があります。
実はここが今回のハイライト
冒頭で述べたとおり、どこもかしこも立入禁止⛔
発電所はもとより導水路、取水堰堤に通じる管理道もすべて封鎖されています。
ぽ〕頼まれもしないのに辺りをウロウロする人が居るからじゃないですか?
所〕まったくだ!実に迷惑
ぽ〕あんただよ。(ビシッ!)
所〕是非もない。
かくなる上は、
ドキッ、沢を歩いていたら発電所の建物が突然目の前に!作戦で(ゴンッ)
アホか!ポイッ⌒🔨
溝口図書館にでも寄って帰りましょうよ。
土日も開いてる(⇦ここ大事)からあそこ便利なんですよ。
沿革
それでは座学に入ります。
まず『溝口町誌(1973)』から一部引用。
戦後日野郡では農協経営による小水力発電所が、日野上村、石見村(いずれも現日南町)、黒坂、根雨(いずれも現日野町)地区などに建設され、この地方の電力増強に一役買っている。
本町でも昭和33年1月、大江川の水を利用する発電所建設事業が、当時の溝口、二部、日光の三農協共同事業として着工されることになり、昭和34年9月15日完成、発電を開始、中国電力株式会社に売電を行っているが現在は溝口町農協の経営である。
この発電所は、大江川上流2,012㍍の地点にあるえん堤の水を利用し、ここから下流に延長834㍍、100分の1.6の勾配の導水路をつくり、上野宇川平に沈砂池と上水槽を設け、ここから水圧鉄管によって有効落差44㍍、常時180㌗の発電機を動かしている。
この発電所の施設と発電量は次のとおりである。
名称 | : | 溝口町農協小水力発電所 |
所在地 | : | 溝口町上野宇川平 |
最大出力 | : | 180kW |
常時出力 | : | 180kW |
発電機容量 | : | 180kWA |
電圧 | : | 110kV |
周波数 | : | 6000 |
竣工年月日 | : | 34.9.15 |
送電開始 | : | 34.9.15 |
経営主体 | : | 溝口町農業協同組合 |
1月 | : | 152,543 |
2月 | : | 146,691 |
3月 | : | 162,993 |
4月 | : | 157,139 |
5月 | : | 113,539 |
6月 | : | 124,975 |
7月 | : | 143,377 |
8月 | : | 129,442 |
9月 | : | 146,460 |
10月 | : | 164,414 |
11月 | : | 156,878 |
12月 | : | 165,345 |
詳しく書いてあってとても助かります、ナムナム。
ここでは溝口町農協小水力発電所という名前になっていますね。
因みに、いくつか目についた間違いがあるので補足しておきますと、
常時出力 :180kW
これは最大出力の事でしょう。
有効落差が近隣の農協系小水力と同程度、発電機も同年代のイームル工業製ですので。
発電機容量:180kWA
kVA(キロボルトアンペア)、もしくはkW(キロワット)の事でし
あとだしジャンケンのうえに重箱の隅をつつくのが上手ですよね。
地獄に堕ちればいいのに。
え…そこまで!?
えーと次に、
溝口町制30周年記念誌『溝口町のおいたち(1985)』
より一部引用します。
この発電所は、大江川の上流2012mのところにあるえん堤を利用して、下流に延長834mの導水路をつくり、上野宇川平に沈砂池と上水槽を設け有効落差44mで出力180kWの発電機を動かしています。
昭和53年3月9日洪水で発電所が被害、打撃を受けましたが同年9月22日再建、運転を開始して現在に至っています。
町史と内容の被る部分が多いですが、洪水被害とそこからの復旧についての情報を得る事が出来ます。
次に碑文(1959年)からそのまま。
溝口発電所建設記念碑
溝口、日光、二部農業協同組合が合同して大江川に小水力発電を計画し
眠れる資源を開発して本町の産業の進展生産の増強を図り
農村電化による生活の合理化文化の向上に資する為め
昭和33年7月議を起し縣に設計並に監督を委託
測量の結果好適地たる確信を得
爾来農林省広島通商産業局に認可申請を行うと共に
中國電力株式会社に連繋方式により送電方を懇請して契約を締結
昭和34年4月24日工を起し9月25日官庁検査即日認可
茲に待望の送電開始した本施設建設に當り
関係當局並に
元中電副社長新持馨氏
イームル工業社長織田史郎氏
土地関係者各位の御援助
組合員の協力に対し深甚なる感謝の誠を捧ぐ
本発電所が秀峯大山と共に永遠不滅の燈火として郷土の振興の源泉となり
限りなき発展の礎となることを祈る
茲に竣工の式を擧ぐる日
その概要を誌して記念とする
時系列は後でまとめるとして、とにかく目を引くのが織田史郎の揮毫。
本シリーズ第0回でくどい程に説明した、他でもない小水力の巨人と称される中国配電の元取締役にしてイームル工業の創立者です。
鳥取県西部の電力史が、如何に織田史郎抜きで語る事が出来ないかがわかります。
因みにここでは溝口発電所となっていますね。
もうこの名前で統一してしまいましょう。
⇧織田史郎に弱い
次に、
国土交通省『発電データベース(2010-03-31)』
より引用。
水系/河川名 | : | 日野川水系大江川 |
発電所銘 | : | 溝口発電所 |
型式 | : | 流込式 |
最大使用水量 | : | 0.54㎥/s |
最大出力 | : | 180kW |
事業者名 | : | 鳥取西部農協 |
水源ダム名 | : | 取水堰 |
減水区間 | : | 0.85km |
当初許可年月日 | : | S34.05.22 |
いやどう考えても水路式だろう?!
減水区間も水圧鉄管もあるのにブツブツ…
まぁいいや。
⇧権威にも弱い
次に、
JA鳥取西部『自己改革推進レポート(2021-04)』
より設備更新の情報を一部抜粋します。
同JAの組合長らが玉串奉奠(ほうてん)などの神事を行い、今後の安全稼働などを祈願した。
更新工事の竣工年月日がわかるのがありがたい。
それでは最後に、発生イベントを時系列に沿ってまとめます。
昭和33年01月__日 | : | 着工(溝口町史) |
同年07月__日 | : | 鳥取県に設計、監督を委託(碑文) |
昭和34年04月24日 | : | 起工(碑文) |
同年05月22日 | : | 官庁認可(国交省) |
同年09月15日 | : | 竣工、送電開始(溝口町史) |
同年09月25日 | : | 官庁認可(碑文) |
同年10月24日 | : | 記念碑の建立(碑文) |
昭和53年03月09日 | : | 洪水によって発電所に被害(記念誌) |
同年09月22日 | : | 再建、運転を再開(記念誌) |
令和03年03月13日 | : | 竣工式の開催(JAレポート) |
こうやってまとめてみると時系列がグチャグチャですね。
県に監督を依頼する前、昭和33年の着工っていうのはたぶん着手のニュアンスだと思うんだけど、送電開始の前と後に官庁認可がふたつあるのって何ごと?
とりあえず碑文の内容を優先して、
竣工 ⇨ 官庁認可 ⇨ 送電開始
ってことにしとくと辻褄があうのかな?
⇧やっぱり織田史郎に弱い